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変わりゆく世界
キョウヤの誕生日A
「…ヤ、キョ…ヤ!!」

誰かが呼んでいるようだ。
自分を起こそうとするなんて良い度胸じゃないか。

「キョウヤ!起きてっ!!」

雲雀は寝返りをうち、ゆっくり目を開ける。

ここで普段なら、畳の規則正しい編み目と稲藁の匂いが広がるはずだが、今日は違った。
目の前には視界いっぱいの白いレースと、どことなく甘い香りがふわりと匂う。

かなり驚いたわけだがそれは顔に表さず、眉を顰めるだけに止める。
…一体これは何なのだ?


「やっと起きたわね!まったく、いくら呼んでも起きないなんて!!」

声だけで誰が自分を起こしたか、わざわざ確認せずとも雲雀には分かる。
このキャンキャン吠えるポメラニアンはリサしかいない。

視線を上にずらすと、流石に雲雀も動揺を隠せなかった。


「君……なんてふざけた格好してるわけ?」

真っ白なエプロン。
大きなリボン。
スカートは短く、裾からは白いレースとしなやかな足が伸びている。

まぁ、所謂メイド服というものであるわけで。

「ディーノさんがこれ着ればキョウヤが喜ぶって送ってきてくれたんだよ」

どう?似合う??
くるりと回るリサを見、雲雀は大きなため息をついた。
今度あの金髪のイカレ頭のイタリア人を咬み殺す。


嫌いか嫌いではないか。
単刀直入に答えるのであれば嫌いではない。だからと言っても取り立てて騒ぐほどでもない。

しかしこれは…かなり目のやり場に困る。
普段は膝丈のタイトスカートなのに対し、今日はやけに短くてヒラヒラしているため、屈めばすぐに下着が見えてしまいそうだ。


ここは男ばかりの集団である。
彼女に対して性的対象として見ていなかった輩もこれでは妙な意識を持ってしまう可能性がある。
風紀が乱れる原因に成り兼ねないし、雲雀自身も面白くなかった。

「…取り敢えずソレ脱いできて。」

雲雀は目をそらし、布団から這い出る。
今日は休日だが、いつまでも布団でグータラしているつもりはなかった。

しかし着替えるために立ち上がろうとすれば、裾を引っ張られているのか着物が乱れた。
視線を戻すと、元凶はリサ。


“やっぱり似合わないかな…?“

上目遣いで自分をジッと見つめる大きな目は潤んでおり、雲雀は少しひるむ。


なんだこの状況は。


彼は女性に苦労したことはなく(むしろ引く手数多だ)、性欲の捌け口として幾人かの女性と体だけの付き合いはしてきたが、ここまで理性との格闘に苛まれた経験はなかった。
いつものドライな付き合いの感情とは違う、何かモヤモヤした気持ち。
その気持ちが何物なのか分からずイライラする。


「キョウヤ…??」


自分の中の何かが外れたように、無意識に伸びた手は彼女の肩を抱く。
そうだ、深く考えるのは性に合わない。
触れたいなら触れればいい。


耳朶、目尻、頬、首すじ。
順番に啄むようにキスをすると、彼女の口から自然と甘い吐息が漏れる。


そうしてリボンを外して唇が胸元に届くその時――


「いよぅ!恭弥!!プレゼントは喜んでくれたか!!?」

派手な金髪の男性が部屋に突然乱入してきた。
ぞろぞろと後ろから黒ずくめの集団も入ってくる。

「あ、ディーノさん。こんにちは」

空気読めない男(MAN)、略してKYMのキャバッローネボスのディーノの登場だった。
彼は部屋に入った瞬間、状況を理解して大量に冷や汗をかき始めた。

回れ右をして引き返したいが、もう遅い。
目の前から真っ黒いオーラが立ちこめ、雲雀の怒りが頂点に達していることを示唆していた。
この状況を読み込めてないリサは、先ほどの状態のままディーノに手を振っている。

雲雀はスッとリサから離れると、トンファーを構えた。

「覚悟は・・・できてるよね?」
「え・・ちょっ・・・まっ・・・!!恭弥!!落ち着け!!」
「問答無用」




作業していた草壁の耳に何かを破壊される音が届く。
彼は無言で携帯を取り出し、ある場所の番号を打ち込んだ。

「草壁だ。また施設の修理を・・・あぁ、いつも通り頼む」


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雲雀誕生日編。
ありがちネタでした。

今回も草壁さん落ち。
草壁さんには大変いつも苦労をかけてごめんなさい。
今回はディーノお兄様にも大変な扱いをかけてしまいました。
いつか報われる時がくるといいね…!!(願望

早く夢主と雲雀はくっついてしまえばいい!!

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あきゅろす。
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